エレニの旅という映画をみた。
エレニという女性の半生記であり、悲しい悲しいストーリーである。
美しい映像と音楽で物語は展開され、映画はやはり音と映像の芸術だと実感させられた。
すごいなと思ったのは、彼女の物語でありながら語られているのは家族であり、社会であり、国家であり戦争であり、生、人間なのだなということが、見終わって何日かしてしみじみと感じられることである。
スケール感というのはこういうことを言うのかと思った。
ひるがえって、建築である。
数年前、コルビジェ追想の旅というのに参加した。
いくつかの作品を見ているうちに、コルビジェの人物像みたいなものが頭に描けた。
俺についてくれば大丈夫だ。 俺が皆を幸せにしてやる! 頑固で強情なオヤジ像。
作品にも少し押しつけがましいが、どこか暖かいオヤジの手のようなものが感じられた。
映画の中でエレニが遭遇する様々な出来事、その背景に感じられる作者のスケール。
建築も最後のところはその辺が本質として残るところかもしれない。
映画が、映像と、音と、ストーリーで人間を語るものであるなら、建築では、何で何を語るのか。
少なくとも、表現のための表現というショートサーキットの世界には入り込まないようにという戒めだけは強く持ちたいと思う。
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